研究概要 |
研究計画にのっとり,宮崎県内で実際に肉用牛の子牛の発育記録を測定している地域において,まず,雌牛の繁殖能力としての生時体重におよぼす母性遺伝効果の影響を検討した。材料は宮崎県椎葉村において,1993年5月から翌1994年3月までに誕生した黒毛和種子牛226頭の生時体重とし,これらの子牛から1966年誕生の個体まで血統を遡った血縁個体1088頭を加えた計1314頭を分析対象個体とした。分散成分はEMアルゴリズムによるREML法により推定した。その結果,相加的遺伝効果および母性遺伝効果を考慮する評価モデルにより,相加的遺伝率,母性遺伝効果の遺伝率および相加的遺伝効果と母性遺伝効果間の遺伝相関はそれぞれ0.53,0.09および-0.27と推定された。これらは他の分析結果の傾向とも一致するものであった。以上より対象形質の記録を持つ個体が226頭と同時期に椎葉村内で生産された半数程度の頭数であり,集団の遺伝的状況を完全に表しているとはいえないが,他の分析結果ともよく一致した傾向を示していることから,集団の状況を反映したものであることが確かめられた。本結果については,論文投稿を予定している。 次に,雌牛の繁殖能力と枝肉形質との遺伝的な関連性を見るための予備的検討として,宮崎県都城地区における雌牛の繁殖成績および枝肉出荷成績の間の関連性を検討した。分析方法としては繁殖成績および枝肉出荷成績それぞれについて遺伝的評価を行い,その結果得られた育種価予測値間の単相関を算出した。その結果,初産月齢に関しては脂肪交雑評点との間に0.0,ロース芯面積との間に0.24という単相関係数が得られた。また,分娩間隔は脂肪交雑評点との間に0.18,ロース芯面積との間に0.15という単相関係数が得られ,それぞれの育種価予測値間に大きな相関関係は認められなかった。本結果を考慮し,今後は実際に遺伝的関連性を明らかにしていくつもりである。
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