1.アクチビン受容体に対する抗体の作製:アクチビン受容体IIB型(ActRIIB)のアミノ末端部の合成ペプチドを購入し、それに対するポリクローナル抗体を作製した。得られたウサギ抗血清およびそのIgG分画は、ラット卵巣の細胞膜蛋白質試料においてActRIIBと分子量がほぼ一致する単一物質と明瞭な反応を呈した。また、この抗体はラット下垂体の初代培養細胞においてアクチビンが示す卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌刺激作用を阻害しうることがわかった(投稿準備中)。 2.ラット下垂体細胞におけるActRIIBの発現とその調節:作製したActRIIB抗体を用いてラット下垂体におけるActRIIB発現を免疫細胞染色法により調べた。その結果、誕生から性成熟に至るまでの過程では、ActRIIBを発現している下垂体細胞の割合が、血液中のFSH濃度や下垂体のFSH産生細胞の比率の変化に伴って推移していた。さらに、ラット下垂体におけるActRIIB発現に影響を及ぼす物質を探索しているが、これまでにその候補がひとつ検出されてきている(投稿準備中)。 3.下垂体におけるアクチビンの標的細胞種の探索: (1)ラットやウシの下垂体の顕微鏡連続切片を作製し、ActRIIBおよび各種下垂体ホルモンの抗体を用いて免疫組織染色を行い、ActRIIBを発現している細胞種の特定を試みている。 (2)マグネティック・セルソーター・システムを用いて、ActRIIBを発現している細胞集団の選別を最近試み始めた。 4.性腺刺激ホルモン分泌細胞の多様性:下垂体の性腺刺激ホルモン分泌細胞一つひとつの違いを探索する目的で、リバース・ヘモライティック・プラークアッセイ法を用いていくつかの性腺刺激ホルモン分泌刺激物質に対する反応を比較した。これにより、これまで性腺刺激ホルモン分泌細胞として分類されていなかった細胞の中にも性腺刺激ホルモンを分泌しうるもの、いわば性腺刺激ホルモン分泌細胞の「予備軍」が存在していることを示唆する結果が得られた(投稿準備中)。筆者は以前の研究で、アクチビンの標的細胞がこの種の細胞である可能性を提唱しており、上記3との関連を含めてさらに研究を進めていきたい。
|