本研究は、炎症時の炎症性滲出物が胸腔内に滲出する機序に胸膜の透過性亢進が関与していることが考えられることから、胸膜の透過性調節に関与する中皮細胞の役割を明らかにすることを目的に行った。既に培養細胞系を確率しているラットの胸膜中皮細胞を使用し、炎症媒介物質であるヒスタミン、ブラジキニン、トロンビンに対する透過性をアルブミンの透過性と電気抵抗を測定することにより明らかにした。いずれの物質も濃度および時間依存性に透過性を増加した。透過性亢進は細胞内カルシウム濃度の上昇に関連していることが明らかになるとともに、アクチンフィラメントの再構築やF-アクチンの増量も透過性上昇の一端を担っていることが明らかとなった。これらの結果から、中皮細胞の胸膜における物質の透過性調節に対する生理的・病態生理的役割の一端が明らかになった。また、中皮細胞の細胞機能に関しても重要な知見が得られたものと考えられる。
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