本研究の目的は、各種雌動物における卵巣および胎盤でのステロイド産生能を検討することであった。そこで、ネコとツキノワグマの卵巣および胎盤を研究材料として免疫組織化学および内分泌学的にステロイド産生能の検討を行った。 方法は、妊娠中のネコおよび妊娠していたと思われるツキノワグマの卵巣および胎盤を採集し、10%ホリマリン液で固定した。ネコについては生体より外科手術的に採取した。固定された材料は常法にしたがってパラフィン切片とした。免疫染色は、キットを用いてABC法で行った。使用した抗体は、4種類のステロイド合成酵素、P450scc、3βHSD、P450c17およびP450aromに対する抗血清であった。さらに、ツキノワグマについては妊娠雌より血液を採集して、血清中のステロイド濃度をラジオイムノアッセイによって測定した。 その結果ネコでは、1)妊娠期のプロジェステロン産生母地は黄体から胎盤に移るが、妊娠後半期にも黄体はプレグネノロンの産生能を有する 2)胎盤の栄養膜合胞体層はエストロジェン(妊娠期間全体)およびプロジェステロン(妊娠後半期)の産生能を有し、加えて妊娠末期には脱落膜細胞がエストロジェンおよびプレグネノロンの産生能を有することが推察された。 ツキノワグマでは、1)着床遅延初期には黄体が主要なプロジェステロン産生母地であるが、少量ながらエストロジェンも産生されている 2)黄体でのエストロジェン産生細胞は小型の黄体細胞である 3)黄体でのエストロジェン産生能は着床後に低下する 4)胎盤がエストロジェン産生母地であることが推察された。
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