本研究では、各種サルに感染しているSTLV-Iの遺伝子解析を行い、HTLV-I関連疾患との相互関係を解析し、病態との関連でSTLV-Iの遺伝子構造と機能を明らかにすることを目的とする。 1)昨年に引き続きアフリカ産のアフリカミドリザル、サイクスモンキーおよびアジア産のニホンザル、ブタオザル、ボンネットモンキー、紅顔ザル、台湾ザルなどマカク属由来のSTLV-Iについて系統解析を進めたところ、アジア産のサル由来のSTLV-Iの多様性がさらに明らかとなった。 2)昨年インドネシアの類人猿であるオランウータンよりSTLVを分離する事に成功したが、遺伝子系統解析の結果、アジア産のマカク族のサル由来のSTLV-Iに比較的近縁であることが明らかとなった。 3)当研究室で飼育しているSTLV-Iプロウイルスゲノムのモノクローナリティーがかなり進んでいるSTLV-I自然感染アフリカミドリザルにおいて、引き続き経過観測しているが、眼底検査、血液検査、脊髄反射等の詳細な臨床検査でも、ヒトでHTLV-Iに関連して認められる白血病、神経疾患、関節炎、ブドウ膜炎、肺炎等の疾患の兆候となるような異常は今のところ認められていない。 1)2)の結果は、HTLV-I/STLV-Iの起源と伝播を考える上で興味深い。3)よりSTLV-I遺伝子と病態との関連を直接示唆する証拠は今回も得られなかったが、今後も注意深い観察が必要と考えられる。
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