新しい実験動物として開発が進められている食虫目に属するスンクスについて、起源の異なる実験室系統及び各地域野生集団におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)多型の検索を行い、スンクス地域集団における遺伝的分化と地理的分布の関係を考察した。これまでに行った制限酵素切断型多型の検索結果から、スンクス系統及び集団間でマウスにおける亜種程度に分化していることが判明し、さらに大陸に生息する集団内では系統間あるいは集団間と同程度の異なった型のmtDNAを共有している反面、東〜東南アジアの島々の集団では遠く隔たっているにもかかわらず、非常によく似たタイプのmtDNAを有していることを報告した。 今年度はまず、これまでに調査したフィリピンとベトナムから追加サンプルが得られたので、それぞれの地域の個体について制限酵素切断型多型を検索したところ、以前と同じ結果が得られた。ベトナムは大陸であるがそこに住むスンクスは島嶼型のmtDNAを有しており、ベトナムのスンクスはインドネシアあるいはマレー半島より渡来した可能性が高いことが裏付けられた。mtDNAの塩基配列の解析については、バングラデシュ由来の1系統において3種のtRNA遺伝子とD-loopの全領域の配列を決定した。D-loop領域内には2種の繰返し配列があることが確認され、この繰返しの数の違いによってスンクス系統及び集団間でmtDNAの大きさの変異が生じているのではないかということが示唆された。 今後の展開として、大陸産及び島嶼産のそれぞれ2〜3系統についてD-loop領域の配列を決定して比較すること、また核型の変異が報告されている中国産野生スンクスのmtDNA多型の調査を行う予定である。
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