1)レニン-アンギオテンシン(RA)系は血圧や電解質バランスの調節において重要な役割を演じている。RA系の生理作用の多くは薬理学的解析により、Type1受容体(AT1)を介するものと考えられているが、AT1には2種のサブタイプ(AT1a、AT1b)が報告されており、これらの機能分担は明確になっていない。そこで、マウス胚性幹細胞(EScell)を用いたジーンターゲッティング法により、内在性アンギオテンシIIType 1a(AT1a)受容体遺伝子を欠損するマウスを作出した。その結果、同マウスは、AT1b遺伝子が存在するにも関わらず低血圧を呈することが明らかとなった。このことより、AT1aを介するアンギオテンシンII(AII)シグナルが血圧の維持において、他の受容体サブタイプや血圧調節機構で補償し得ない、重要かつ特異的な役割を果たしていることが明らかとなった。 2)内分泌調節や初期発生過程において重要な役割を演じるヒト・アクティビンβ_A鎖遺伝子の5′上流エンハンサー領域の解析を行った。同領域にはTPA応答性領域様配列(TRE)とcAMP応答性領域様配列(CRE)が存在するが、これらの配列に欠失変異を導入すると、エンハンサー機能が著しく低下すること、及び同領域に対するタンパク性因子の結合が阻害されることにより、TRE、CRE配列とそれらの結合因子がアクティビンβ_A鎖遺伝子の転写において極めて重要であることが明かとなった。これにより、内分泌調節や初期発生を遺伝子の発現調節を通して理解するための足がかりができたと考えられる。
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