クロロフィル生合成の分子調節機構を調べるため、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(Protox)阻害剤を用いた作用機構研究を行った。本研究では、葉緑体に存在するProtoxを阻害剤感受性Protox活性を指標として、直接精製・製造解析を行う方法と、阻害剤と特異的に結合するタンパク質を阻害剤との親和性を指標として精製・製造解析を行う方法の二つを試みた。Protoxの精製を行うにあたり、まず、Protoxの局在部位や性質を詳細に調べた。その結果、Protoxは葉緑体膜に存在しTritonX-100などの界面活性剤で容易に可溶化されること、また、可溶化されたProtoxは本除草剤と高い親和性で結合することを明らかにした。さらに、結合阻害実験やProtoxの動力学的解析により、除草剤が結合するタンパク質はProtoxであり、阻害様式は基質であるProtogenとの拮抗阻害であることも明らかにした。Protoxの精製は、20kgのホウレンソウから単離した葉緑体を出発材料とし、イオン交換、吸着、アフィニティークロマトグラフィーを始めとする各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせて行った。その結果、葉緑体Protoxの候補として塩基性の58kDaのタンパク質を確認した。次に、結合活性を指標とした結合タンパク質の精製のため、まず、Protox阻害型除草剤であるアシフルオルフェンをリガンドとするアフィニティーゲルを作成した。葉緑体タンパク質を数段階のカラムクロマトグラフィーで部分精製した後、新しく作成したゲル担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーに供した。このアフィニティークロマトグラフィーを行うに当たり、過剰量のフリーのリガンドを同時にカラムに供したものをリファレンスとし、その差から特異的結合タンパク質を推定した。その結果、上記のProtoxとよく似た分子量を有するタンパク質を除草剤結合タンパク質の候補として更なる解析に供することができた。現在、二つの方法で精製してきたタンパク質が同一なものなのかどうかを構造解析を行うことにより解析している。
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