ヒトIL5をモデル糖蛋白質として、V-src、V-sis、V-erbB、V-K-rasの糖蛋白質特異的な糖転移酵素群の活性発現制御機構の解析を試みるべく実験を行った。JCRBより入手したヒトIL5遺伝子を鋳型に、そのN末部分は翻訳効率上昇のためKozak配列を導入する一方、C末はmRNAの安定性向上のため3′非翻訳領域を欠失させるようにPCRを行った。得られたDNA断片をCAGプロモーターを持つpCAGGSに導入した(pCAG-2)後、さらにプラストサイジンS耐性遺伝子を導入して、ヒトIL5安定発現用プラスミドpCAG5-2BSDを得た。pCAG5-2BSDを正常株NIH3T3及びその癌遺伝子導入株V-src-NIH3T3、V-sis-NIH3T3、V-erbB-NIH3T3、V-K-ras-NIH3T3に導入し、薬剤耐性コロニーを得た。これらの株をMEM+10%仔牛血清の培地を用いて培養したところNIH3T3では1ng/ml、癌遺伝子導入株では10-20ng/mlのヒトIL5を産生していることがELISA法により明らかになった。ヒトIL5を産生するNIH3T3株を用いて培地からのヒトIL5の精製を考慮し、血清成分の低減化が可能なopti-MEMを基本培地に血清成分の低減化を試みたところ、1%及び2%仔牛血清存在下では形態変化を引き起こしたため、生産には不向きであると考えられる一方、4%仔牛血清存在下では形態変化を引き起こさず、生産量もMEM+10%仔牛血清と同等であった。以上により、この培地組成によりNIH3T3及びその癌遺伝子導入株でのヒトIL5の生産が可能であると考えられる。
|