CTSマウスは先天的にTリンパ球依存性免疫が著しく低下しているが、それは末梢リンパ組織内のTリンパ球の数的低下によることがこれまで明らかにされた。さらに、CTSマウスのTリンパ球減少の原因を胸線に注目し検索したところ、CTSマウスの胸線には成熟型のTリンパ球が正常マウスに比し、著しく多く、胸線皮髄境界領域のperi-vascularspaceに蓄積している像も観察された。また、CTSマウスにおいて末梢リンパ節へのホ-ミングレセプターであるMEL-14を高発現する細胞が胸線に多いことやCTSマウスの胸線リンパ球が高いホ-ミング活性を有することから、胸線リンパ球のホ-ミング能の欠如によるものでないことが示された。一方、胸線からのリンパ球の移出能を検索したところ、正常マウスに比べ、著しく低いことが判明した。従って、CTSマウスのTリンパ球減少の原因としては胸線から末梢への移出能の欠損が推定された。次に、この異常が固体発生のどの時点で生じるのかを検討するために、CTSマウスの胸線を用い生後発生について検索を加えた。胸線リンパ球の細胞数の生後発生における変化は他の正常マウスと比較して有意な差は認められなかった。しかし、サブセットの変化、すなわち、成熟型Tリンパ球の増加(蓄積)は生後10日齢以降におこることが判明した。またこの変化はMEL-14でも同様に観察された。以上より、このマウスの胸線内の成熟型リンパ球の増加(蓄積)は生後胸線内に成熟型リンパ球が生成されてから確認されることが判明した。
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