精巣のセルトリ-細胞と筋様細胞を共培養すると精細管様の構造を形成する。われわれは、約20日令の雄ラットの精巣より単離したセルトリ-細胞と筋様細胞を、浮遊培養用シャーレ上で共培養し、精細管様構造再形成における細胞動態と、それに関与する細胞外マトリックスの観察を行った。 浮遊培養用シャーレで共培養したところ、接着性のシャーレより短い時間で、コード状の精細管様構造の形成が観察された。また、アクチノマイシンDでは阻害されず、シクロヘキシミド、コルヒチンによって阻害されることから、RNA合成は必要でないが、タンパク質の合成およびその分泌が必要であると考えられる。この精細管様構造の形成過程における細胞動態を観察するために、2種類の細胞をそれぞれ異なった蛍光を持つ生体膜標識蛍光プローブで染色し観察したところ、混ざりあったセルトリ-細胞と筋様細胞の動きは、筋様細胞は接着伸展、セルトリ-細胞は会合動きを示した後、集まったセルトリ-細胞の周囲を筋様細胞が取り囲み、セルトリ-細胞が内側、筋様細胞が外側のコード状の精細管様構造を形成する細胞動態が観察された。 セルトリ-細胞と筋様細胞の共培養を様々な細胞外マトリックス上で行ったところ、4型コラーゲン、ラミニン上では精細管様構造再形成に影響はないが、1型コラーゲン、フィブロネクチン上では細胞が接着伸展した状態のまま精細管様構造が形成されなかった。GRGDTP、GRGDSPのポリペプチドを培養液中に加えて、1型コラーゲン、フィブロネクチンと競合させても精細管様構造が形成されなかった。また、細胞が接着できないBSA、アガロース上でも精細管様構造が形成が行われなかった。 平板培養における精細管様構造の形成には細胞が接着面に接着しすぎても接着できなくても精細管様構造再形成が認められず。その接着に必要な細胞外マトリックスとして、1型コラーゲン、フィブロネクチンが関与していると示唆される。
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