皮膚分化過程において表皮と真皮との相互作用が重要であることが知られている。皮膚では表皮と真皮との境界に細胞外マトリックスの一つである基底膜が存在し、これによって両者は結合されると同時に仕切られている。また、インテグリンを介して細胞外マトリックスの情報が表皮に伝達される。今回、皮膚分化過程における細胞外マトリックスとインテグリンの発現との関係を調べる目的で、特に基底膜に注目しその構成成分[IV型-コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、テネイシン、β-ガラクトシド結合性レクチン(ガレクチン)]、並びにインテグリンに対するそれぞれの特異抗体を用いて、ニワトリ胚脚部皮膚(in vivo)、培養皮膚(in vitro)におけるそれぞれの発現過程を免疫組織細胞化学的に検討した。 皮膚が形成される孵卵5日目には、既にIV型-コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンの発現が認められた。テネイシンは表皮が角化する孵卵17日以降に出現した。16kガレクチンは基底膜並びに真皮の細胞外マトリックスで発生初期に強く発現するが、表皮の角化に伴い次第に減少し、20日になるとほとんど認められなくなった。一方、14kガレクチンは13日まで発現は微弱であり、17日以降強く発現した。これに対し、β_1インテグリンは発生初期には表皮全層の細胞膜全周に発現するが、17日以降は基底細胞にのみ認められた。さらにガレクチン並びにβ_1インテグリンの作用を調べる目的で、これらに対する抗体存在下でニワトリ胚皮膚を培養すると表皮の角化は阻害され、且つ基底膜の表皮基底面からの剥離が観察された。 以上より、細胞外マトリックスの変化は表皮分化過程に密接に関係することが明らかになった。さらにガレクチンやβ_1インテグリンは表皮と真皮との接着並びに表皮の角化に関与していることが示唆された。
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