脳毛細血管の内皮細胞には、他の血管内皮細胞と比べ、著しい特徴が備わっている。その内、きわめて発達したタイトジャンクションの存在は、血液・脳関門の機能を、細胞レベルで荷うものであるが、培養条件下においては、その存在を認めることは、困難である。 当該年度においては、脳毛細血管内皮細胞の初代培養法と、タイトジャンクションの生成を簡便に測定できるアッセイ法の確立を行い、将来的に内皮細胞にタイトジャンクションの形成を促す因子の単離を目的としている。 成熟ラット大脳より、酵素処理およびパーコール密度勾配により、毛細血管を分離し、さらに内皮を分離した。PDGFを含まない血清を用いて数代継代培養を行うことにより、ペリサイトをとりのぞき、ほぼ純粋な脳毛細血管内皮細胞を得た。この細胞を多孔性の膜上に生着させ、その上下間の電気抵抗を測定することにより、タイトジャンクションの形成をアッセイした。また、内皮細胞のγ-GTP活性も分化の指標として測定した。このアッセイ系を用いて、アストロサイトの培養上清中に、脳内皮細胞のタイトジャンクション形成を促し、γ-GTP活性を上昇させる活性を見出した。 しかし、この活性の存在は、アストロサイトの徴妙な培養条件によって左右され、この活性を精製するのは現段階では困難である。現在、アストロサイトの最適な培養条件、脳抽出液から直接精製する方法等を検討している。
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