研究概要 |
1.肝門脈血液中のエンドトキシン(LPS)濃度の測定 i)慢性植え込みカニューレを肝門脈に挿入後第3-4日目に採血、血漿分離後、検体とした。最初に採取した検体はしばしばLPS濃度が高値を示し、カニュレーションの死腔や先端の細菌汚染が予想された。しかし、2回目以後のLPS値はおおよそ低値で安定する傾向が見られたため、実験開始直後のサンプルのみをデータから除外した。 ii)既知の標準LPS溶液を正常血漿中に加え、その回収率を算出した。その結果、検体を氷冷していた場合、その回収率は90%以上であったが、37度で10分間インキュベーションしてやると血漿中の添加した標準LPS量は、約1/3に低下してしまうことがわかった。血漿中には補体などのLPSを活性化する種々の因子の存在が報告されており、検体の温度管理がたいへん重要であることが明かとなった。 iii)肝門脈血液の安静時LPS濃度は、一般静脈血のそれと比較して約30%高値を示した。拘束ストレス負荷により肝門脈中のLPSレベルは拘束負荷30分後に基礎値の約3倍まで上昇したが、1時間の拘束を加えているのに関わらず、拘束開始1時間後には下がり始め、2時間後(拘束終了1時間後)にはほとんど基礎値に戻った。 2.肝クッパー(K)細胞のIL-6生産能を及ぼすノルアドレナリン(NA)の作用 i)K細胞の一次培養系を用いて、NAが、IL-6の生産に及ぼす効果を観察した。その結果、NAの濃度(10nM-100μM)に依存して、IL-6の生産量が増加した。しかし、その効果は最大でも基礎分泌量の約30%増加に過ぎなかった。(NA,10μM)。 ii)K細胞のLPS刺激によるIL-6の生産能は、用量依存的(1ng/ml-1μg/ml)に著明に増加した(約10倍)。さらに、NAの同時投与はこのLPSの効果を約30%増強した。 iii)上記の結果より、拘束ストレス時の抹消IL-6増加反応では、腸管由来のLPSが肝でのIL-6産生の直接因子となり、交感神経の終末より遊離されるNAが、増強因子となっている可能性が示唆された。
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