三量体G蛋白質(G蛋白質)βγサブユニットにより活性が制御される内向き整流カリウムチャネル(K_Gチャネル)は、中枢神経系、心房等に存在することが電気生理学的に知られていた。ところが、K_Gチャネルの活性化がβγサブユニットによる直接的な相互作用によるものか、結論付けられてはいなかったので、K_Gチャネルの構成分子として1994年にcloningされたGIRK1とG蛋白質との相互作用が解析可能ではないかと考えられた。そこで、細胞質側に露出していると推測されるGIRK1のN末端及び、C末端の両領域を大腸菌で発現し、G蛋白質との結合実験を行った。その結果、βγサブユニットとGIRK1のC末端は直接結合し、その様式はG蛋白質活性化機序と合致することが明らかとなった。 K_Gチャネルを生化学的に検討するために、GIRK1のC末端領域に対する抗体を作製した。この抗GIRK1抗体は、大脳、小脳、心房、そし精巣の細胞膜画分中において、電気泳動上55-70kDaの蛋白質を認識した。これらの分子量の差異は、各組織における糖鎖修飾の差異によるものと考えられる。そこで抗GIRK1抗体を用いて、大脳に発現するGIRK1を含むK_Gチャネルの解析を行った。その結果、免疫沈降法による解析から、数種の蛋白質の複合体として存在すること、ショ糖密度勾配法とゲルろ過法による解析から、その複合体はtetramerとして存在することが明らかになった。さらに、免疫組織染色法により、GIRK1は第三脳室周辺において、presynapseに局在することが明らかとなった。中枢神経系において、K_Gチャネルはpostsynaptic inhibitionに関与すると考えられている。つまりこの結果は、synapse制御機構において、GIRK1を含むK_Gチャネルはpresynaptic inhibitionに関与し、postsynaptic inhibitionには他のチャネル蛋白質からなるK_Gチャネルが機能していることを示すものと考えられる。
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