我々は平滑筋特異的に発現する平滑筋型α及びγアクチンの調節領域に存在するEbox配列を含む二本鎖DNAをプローブとしてニワトリ胚砂嚢平滑筋の核抽出液中のEbox結合蛋白質の存在をゲルシフトアッセイにより検討した。この際に認められた結合活性はEbox配列に特異的なものであり、MyoDの場合と同様に、普遍的に存在する因子であるE12/E47もしくはこれと類似の蛋白質がこの結合に関与していると考えられる。この結合活性は、ニワトリ胚の発生過程において砂嚢平滑筋の分化の結果生じると思われる平滑筋型γアクチンのmRNAの増加に先だって増加した。これは、結合活性が分化の結果発現してくるものではないことを示唆しており、分化を制御している蛋白質により生じているものであるという我々の仮定と矛盾しないと考えられた。また組織特異性の検討により、同様のEbox結合活性が血管平滑筋にも認められ、平滑筋に特異的と考えられた。ニワトリだけでなくブタ胎児の血管平滑筋の核抽出液においても同様のEbox結合活性が認められ、その結合の性質は砂嚢平滑筋と類似していた。 紫外線による共有結合によってEbox結合に関与する蛋白質をSDS電気泳動上で検出することが出来た。E12の分子量が約65kDaであることからして〜70kDaのバンドはE12もしくはそれと類似の蛋白質である可能性がある。45〜50kDaのバンドは、由来の組織が血管か砂嚢かによってまたはプローブの塩基配列がαアクチンがγアクチン由来かによって多少移動度が異なっていたことから、組織または遺伝子によってその発現調節に関与する蛋白質が異なっておりファミリーをなしている可能性がある。平滑筋特異的遺伝子の転写調節、平滑筋の分化決定にかかわっている可能性の検討を含め今後の課題である。
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