研究概要 |
虚血心筋における収縮能の著しい低下において収縮調節タンパク質であるトロポニンの果たす役割を解明するために以下の実験を行った。 収縮モデルの作成及びpH変動による筋収縮Ca感受性変化の測定 速筋収縮モデルとりてウサギ腸腰筋および背筋を、心筋収縮モデルとしてウサギ左心室肉柱をそれぞれもちいた。標本作成に関しては、当初予定していたTriton X-100処理後50%グリセリン中にて-20Cで保存し使用するという方法は標本の脆弱化が避けられないことから取りやめ、それぞれを毎回0.5%のBrij-58にて30分処理することにより作成した可能な限り新鮮なスキンドファイバーを用いて実験を行った。pH低下による張力発生のCa感受性の低下の大きさ、すなわちpH(アシドーシス)感受性は速筋に比べて心筋の方が有為に大きく、従来の報告に一致していた。 トロポニンサブユニットの分離精製。心筋および速筋トロポニンをウサギ心臓および背筋より大量に調整した。各トロポニンサブユニット(T,I,C)を各種FPLCイオン交換カラムを組み合わせて高度に精製した。 心筋スキンファイバー内在トロポニンサブユニットの異種トロポニンサブユニットによる交換および心筋アシドーシス高感受性決定因子に同定 心筋スキンドファイバーを1mg/mlという高濃度の心筋トロポニンTを含む高イオン強度酸性溶液で処理するという当教室で開発された方法をもちいて、内在するトロポニンを交換除去したのち、精製した心筋および速筋トロポニンI、Cアイソフォームで再構成することによって、種々の組み合わせのハイブリッドトロポニンを持つ心筋スキンドファイバーを調整することに成功した。その結果、心筋の酸性pHに対する高い感受性はトロポニンCのみによって決められていることが強く示唆された。
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