研究概要 |
ミクロソームのレチノイン(RA)酸合成活性を司るシトクロムP-450RA(P-450-RA)を精製し、その蛋白化学的性質を明らかにすることにより、分子レベルでのP-450RAの生体内機能(生理的役割)を解明することを本年度の目標をした。まず、RA酸合成活性を指標にP-450RAを精製した。SDS-PAGEによる分子量は、57200であった。CO-還元型のソーレー帯の分光吸収ピークは447nmであった。DLPCを用いた再構成系におけるRA酸合成活性測定の結果より、all-trans,9-cis-RAに対して、それぞれ、38.5、1.6nmol/min/nmolP-450のVmaxと11.6、8.0μMのKmを示した。また本酵素のN末アミノ酸配列(37個)の結果、本酵素はシトクロムP-4501A1(P-4501A1)と同一であることが分かった。そこでP-4501A1活性に特異的な阻害効果を示すα-naphthoflabone(α-NF)と抗P-4501A1抗体、あるいは細胞レベルにおけるRA合成活性阻害剤で知られるcitralを用いて本酵素によるRA合成活性を測定した。α-NFとcitralではKiはそれぞれ25nMと13μMを示し、抗P-4501A1抗体による阻害効果は約70%であった。また本酵素による7-ethoxycoumarinや7-ethoxyresorufinのO-deethylase活性などの薬物代謝活性もP-4501A1によるものと同等の数値を示した。以上のことより、本酵素はP-4501A1と同一であると判断した。 また、生体内でのRA合成における本酵素への基質供給の調節機構のモデルとして、脂質膜および細胞内レチノール結合蛋白質(CRBP)存在下での基質(レチナ-ル)動態を検討した。脂質膜としてDLPCとphosphatidyl ethanolamineを用いて再構成実験を試みた結果、RA合成はCRBPにより負に調節されており、活性はP-4501A1の誘導により増加するという仮説がたてられた。現在この仮説をより示唆するための実験を施行している。
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