ある種のマクロファージ(Mφ)が、自己の異常細胞やがん細胞を特異的に認識し傷害することが次第に明らかにされ、特異的免疫機構においても、リンパ球と同様にその重要性が指摘され始めている。本研究では、移植片拒絶反応において常に大量に浸潤するallograft-induced Mφ(AIM)の非自己MHCクラスI分子受容体の存在を検討した。 精製した非自己可溶性MHCクラスI分子を細胞非特異的付着の少ないバクテリア用の35mm培養皿(Falcon)にコートし、AIMの非自己可溶性MHCクラスI分子認識能を検討した。即ち、10^6のAIMを加えて室温で2h放置した後、結合していないAIMを洗浄除去し残存する細胞をカウントしたところ、rsH-2K^dをコートした培養皿に約3%のAIMが結合した。しかし、非自己rsH-2D^dや自己nsH-2K^bをコートした培養皿への結合は殆ど見られなかった。次にこのrsH-2K^dへのAIMの結合が、移植片拒絶反応の際に浸潤してくるAIMに特異的な性質であるかどうかを検討した。その結果、バクテリアの一種であるBCGで誘導したMφも同様にMHCクラスI分子rsH-2K^dを認識することが判明した。しかし、カゼインやチオグリコレートで誘導した炎症性のMφにはそのような性質が認められなかった。MHCクラスI分子を認識するMφ上の実体を明らかにする為にAIMのmRNAから作成したcDNAライブラリーを、高発現ベクターに組み込んでCOS細胞に導入して発現させ、その中から受容体を発現している細胞を、rsH-2K^dをコートした培養皿を用いたpanning法により濃縮し、目的とするcDNAをクローニングを試みている。
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