研究概要 |
我々は小脳顆粒細胞に強く限局して発現するzinc fingerモチーフをもった新たな転写因子Zicを見いだし、この遺伝子の構造、機能、発現に関する研究をすすめてきた。その結果、Zic1の発現は成熟したマウスの小脳に限らず、マウス胚の神経管の背側で発現することがわかった。また、Zicは最近報告されたショウジョウバエのペアルール遺伝子odd-paired(opa)の哺乳動物におけるホモログであり、マウスにおいて4つの関連遺伝子(Zic1、Zic2、Zic3、Zic4)が存在することも明らかとなった。 そこで、Zic遺伝子の神経管形成における役割を明らかにするために、実験発生生物学的解析が容易なアフリカツメガエルを実験系として選んで解析した。まずマウスZic遺伝子ファミリーにおいて保存されているzinc finger領域をdegenerated primerによってPCR増幅し、これをプローブとしてアフリカツメガエルの神経胚cDNAライブラリーより4種類のアフリカツメガエルZic相同遺伝子Xzic1,Xzic2,Xzic3,Xzic4をクローニングした。これらのcDNAをもとにNorthern Hybridizationにより発生過程におけるXzic遺伝子ファミリーそれぞれの発現時期の同定を行った。その結果、以下のことが明らかになった。(1)Xzic1はマウスZic1と全長アミノ酸配列で90%,zinc finger領域で98%と非常に高い相同性を示した。(2)Xzic2,Xzic3はマウスZic2,Zic3とzinc finger領域でそれぞれ、97%,91%と高い相同性を示したが、Xzic4はマウスZicファミリーのどれともそれ程高い相同性を示さず、新規のZic相同遺伝子と思われた。(3)Xzic1 mRNAは未受精卵から尾芽胚まで低レベルの発現が確認されたが、特に初期神経胚での一時的な活性化および尾芽胚までの発現の上昇が認められた。(4)Xzic2 mRNAは未受精卵から発現が認められ、発生にともなって発現の減少が観察された。(5)Xzic3 mRNAは初期原腸胚で活性化され初期神経胚まで持続しそれ以降mRNAの発現は観察されなかった。(6)Xzic4 mRNAは未受精卵から尾芽胚まで持続的な発現が観察された。
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