肥満するとグルコーストランスポーターを介しての糖の取り込みが低下することが知られている。このように肥満は糖尿病及び循環器疾患発症の大きな要因である。1994年末、ポジショナルクローニングにより肥満関連遺伝子の一つであるobese遺伝子がマウスとヒトで同定された。マウスにおいては、obese遺伝子産物は脂肪組織から分泌され脳の視床下部に作用して摂食行動を抑制するのではないかと考えられている。我々は、グルコーストランスポーター遺伝子の活性化機構解析の過程でマウス、ヒト、そして新たにラットのobese cDNAをクローニングし、肥満モデル動物でのobese遺伝子異常の有無を同定するとともに、ラットにおいてその発現が脂肪組織のみに、しかもその中の脂肪細胞のみに限られていることを確認した。また、肥満モデルラットであるZucker fattyにおいて、その発現が非常に亢進していること、初代培養脂肪細胞においてその発現がグルココルチコイドにより活性化され、そのすくなくとも一部は新たな蛋白合成を介さずに活性化されていることを新たに見いだした。このグルココルチコイドによる活性化がZucker fattyにおける発現の亢進の原因の少なくも一部となっていると考えられる。我々は、糖尿病及び循環器疾患発症の大きな要因である肥満の新しい予防法と治療法の確立を目的として、今後、主に以下のことを行う予定である。 1.obese遺伝子産物の測定系を確立し、モデル動物の糖尿病発症過程での本物質の血中濃度の変化を測定する。 2.脂肪細胞における本物質の分泌構造を解析する。 3.遺伝子工学的手法を用いて発現、精製した本物質をラットに投与し摂食行動の変化を解析する。 4.本物質の受容体をクローニングし、培養細胞に発現させ色々な化合物のアッセイ系として使うことにより肥満の予防および治療薬剤の開発をめざす。
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