シクロオキシゲナーゼは、1型と2型の2種類のアイソザイムが知られているが、2型酵素は、炎症性サイトカインやリポポリサッカライド(LPS)刺激により短時間に誘導されることから、その発現調節と炎症性病態との関連が注目されている。ウシ頚動脈由来血管内皮細胞(BEC)をリポポリサッカライド(LPS)や発癌プロモーターTPAで処理すると短時間のうちに2型酵素mRNAが相加的に誘導される。その発現調節機構を解析した結果、以下の知見を得た。 1.2型酵素遺伝子の5'-上流域とルシフェラーゼ遺伝子とを連結したレポータープラスミドをBECに導入し、プロモーター活性を評価したところ、上流-327塩基対の領域が、LPSやTPA刺激に応答するプロモーター活性を示し、本酵素の発現誘導が主に転写レベルで制御されていることが明らかとなった。 2.変異体を用いた解析やゲルシフトアッセイの結果、-327塩基対の領域に見出されたcAMP応答配列(CRE)、NF-IL6結合配列及びNF-κB結合配列の関与が明かとなった。 3.CRE及びNF-IL6結合配列の両方に結合して転写を活性化する因子の一つとしてC/EBPδが見出され、C/EBPδmRNAがLPSにより短時間に誘導されることから、LPSによる2型mRNA誘導にC/EBPδが関与すると考えられた。 しかしながら、LPSによる誘導において、他の転写因子も必要であり、また、TPAによる誘導に関与する転写因子については未だ不明で、現在検討中である。我々は、既にヒト単芽球様U937細胞においてCREが2型遺伝子の転写活性に必須であることを報告したが、今回の結果は、細胞によって、2型遺伝子の転写制御が異なっていることも明かとなった。今後は、BECとU937細胞における2型酵素遺伝子の発現調節機構を比較することで、その機構の共通点と相違点を分子レベルで明らかにしたい。
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