E-カドヘリン発現調節機構を明らかにするために、E-カドヘリンプロモーターの決定を行った。はじめに、ヒトゲノムライブラリをヒトE-カドヘリンcDNAプローブを用いてスクリーニングし、陽性クローンを単離した。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)アッセイにより、近位200bp程度の領域が上皮性細胞特異的プロモーター活性のcis regulatory elementを含んでいることを明らかにした。ヒトがん由来細胞株に-191プロモーター/CATコンストラクトをトランスフェクションしたところ、E-cadherin発現を欠く細胞株においてCAT活性の低下を認めた。そこで、プロモーター領域のCpGメチル化がE-カドヘリン発現低下の要因の一つとなる可能性を検討した。 E-カドヘリンプロモーター領域はCpG richでmethylation sensitiveな制限酵素HpaIIの認識部位CCGGを多数含んでいた。そこでE-カドヘリン遺伝子5′領域のプローブを用いヒトがん由来細胞株におけるSouthern blotting analysisを行った。培養条件下で細胞間接着異常を示しE-カドヘリン発現を欠くヒトがん由来細胞株において、HpaII消化により、E-カドヘリンプロモーター領域のCpGメチル化を示唆するバンドが検出された。これらの細胞株をメチル化阻害剤である5-azacytidine10μMで15日間処理したところ、免疫細胞化学的に脱メチル化によるE-カドヘリン発現の回復が確認された。 以上より、がん細胞において、プロモーター領域のCpGメチル化によりがん浸潤抑制遺伝子であるE-カドヘリンが不活化されることが明らかになった。
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