研究概要 |
3次元培養による肺胞壁モデルを作成し,さらに培養モデルに肺胞障害後に産生される増殖因子(PDGF,IGF-I)を添加して肺線維芽細胞の増殖率を検討した. [結果] 1.正常ラットから採取した肺胞上皮細胞と肺胞線維芽細胞または欠管内皮細胞と線維芽細胞をコラーゲン・ゲル内で3次元培養し,光顕で観察したところゲル内に線維芽細胞が存在しゲル表面に上皮,内皮細胞が一層配列する肺胞壁と類似の構造を示した.また電顕で観察したところ上皮または内皮細胞が配列している直下に基底模様の構造が観察され,抗ラミニンおよび抗IV型コラーゲン抗体を用いて免疫組織化学的に検討するとこの基底膜構造に一致して陽性像が認められた. 2.この3次元培養モデルに対して,PDGFとIGF-Iを上皮側または内皮側に添加して培養を行い,培養系内の細胞増殖率を検討したところ上皮,内皮の存在しない対象培養系に比較して線維芽細胞の増殖率は低下していた. [考察] 1.肺胞壁に類似した細胞配置や基底膜形成の存在する培養モデルを確立したことで,細胞-細胞間の関係や細胞-物質間の関係を組織形態変化との関係で把握して行くことが可能となった. 2.増殖因子を添加した培養モデルで線維芽細胞の増殖が生じないことから上皮,内皮細胞層が肺胞壁でバリヤ-として機能していることが推測され,肺胞障害後に起こる肺線維芽細胞の増殖には上皮,内皮細胞層のバリヤ-の破壊がおきていることが重要であると考えられた. 現在,上皮,内皮障害物質を3次元培養モデルに添加して形態および物質産生の経時的変化の検討を行っているところである.
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