研究概要 |
本研究では、有効な病原真菌の菌株型別法を、迅速・簡便で、多検体の処理も可能なPCRを用いて開発・検討することを目的としたものである。 以下に研究の内容を3点に大別し、その各々の実施結果について記載する。 1.簡便・迅速な鋳型DNA調製法の開発 従来の分子生物学的型別法では、煩雑で時間のかかるDNA調製法が必須であった。 しかし、PCR法による解析では従来法に比較して低濃度・低分子のDNAで充分解析可能である。そこで、本研究では、医学的に重要な酵母様真菌・糸状菌各々の菌体から簡便・迅速で多検体の処理も容易なDNA調製法を開発した。 2.PCRを用いた菌株型別法の開発 本研究によるランダム増幅法では、臨床的に問題となっているHansenula anomala, Trichophyton mentagrophytes, Penicillium narnefeiの各々の株を、施設毎、または分離由来毎に分離することが可能であった。また、特異的増幅法では、Trichosporon beigelii complexの中で、特にヒトに病原性が強いvar. asahiiを特異的、かつ安定した結果として検出することが可能であった。 3.評価 本法による結果を、パルスフィールド電気泳動法、または特定の遺伝子領域の塩基配列の相同性解析の結果および従来的な生化学的性状と比較することによって評価を試みた。結果は、何れも本研究による型別法は従来的な型別法の結果と矛盾せず、かつ簡便・迅速で再現性にも優れていることが示された。 以上、本研究による型別法の疫学的解析手法としての有用性が示唆された。今後、遺伝子配列に関する情報の得られないものに関してはランダム増幅法、遺伝子配列が既知のものに関しては、適切な特異的プライマーを設計・キット化することによって、より迅速・簡便で安定な型別法の開発を行う。
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