研究概要 |
B群赤痢菌の保有する大プラスミド上に同定したビルレンス遺伝子、virAの機能について今回の研究により、新たに以下のことが明らかになった。1.遺伝子が細胞侵入性にどの程度関与しているのか培養細胞(MK2)に菌を感染させた後、gentamicinにて細胞外の菌を殺菌し細胞内に侵入した菌数を算定することによって調べた結果、virA変異株では親株に比べて約80%、そのレベルの低下が見られた。このことから、本遺伝子は細胞間拡散に加えて細胞侵入性にも関与していることが示された。2.virA変異株のIpa蛋白(細胞侵入性に関与している蛋白群;IpaB,C,D)の発現への影響をそれぞれの抗体を用いてウエスタンブロットおよびELISA法により調べたが、virA変異株でもそれらの蛋白は正常に産生され、また分泌されていた。このことから、VirAの細胞侵入性への関与はIpa蛋白を介するものではなく、直接に関与していることが示された。3.VirAの局在をその抗体を作製してウエスタンブロット法により調べた結果、VirAは細胞外(菌体外)に分泌されることがわかった。さらにその分泌は、Ipa蛋白の分泌に関与している大プラスミド上の遺伝子、spa・mixにより調節されていた。4.ルシフェラーゼを用いたプロモーター・アッセイ法により、感染細胞内でのvirAの遺伝子発現を経時的に調べた結果、細胞との接触時(細胞侵入時)よりも菌が拡散を行う時にその発現の上昇がみられた。以上の結果より、virAは細胞侵入性にも関与するが、本来、細胞間拡散を行うのに必要な遺伝子である可能性が示唆された。当初、VirAの細胞間拡散への関与は、VirG(細胞間拡散に関与している蛋白)の発現を転写レベルで低下させることによって起こるものと考えていたが、しかしvirA変異株にcloned virGを挿入して相補試験を行ってもその回復が見られなかったことから、virAの細胞間拡散への関与は直接的なものであることが示された。 今後、どのようにvirAが細胞間拡散に関与しているのか、そのメカニズミを調べてゆきたい。
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