研究概要 |
1)α毒素によるウサギ赤血球膜中でのホスファチジン酸(PA)合成亢進に関与するGTP結合タンパク質(Gタンパク質)の分子種を明らかにするため、ウシ脳ホモジネイトから三量体Gタンパク質の精製を行った。ウシ脳ホモジネイトを遠心して得られる細胞膜をコール酸ナトリウムで可溶化し、この可溶化物を出発材料として、DEAE-セファセル、及び、セファクリルS-300(HR)カラムクロマトグラフィーを行い、[^<35>S]GTPγSに結合能を有するGタンパク質(Gs、Gi)標品を得た。しかしながら、この画分には、若干他のタンパク質の混在が認められたので、さらに精製を進行中である。また、この部分精製標品を用いて、その効果を検討している。 2)α毒素によるウサギ赤血球膜PA合成亢進とチロシンキナーゼの関係を明らかにするため、チロシンキナーゼ阻害剤の影響を検討した。メチル2,5-ジヒドロキシシンナメート、及び、RCM-リゾチームは、用量依存的に毒素によるPA合成亢進を阻害することが明らかとなった。 3)α毒素のPA合成を増強する赤血球細胞質中の因子の精製を行った。赤血球細胞質に硫安を加え、この硫安画分を出発材料とし、セファクリルS-300(HR),DEAE-セファロース、そして、銅キレートアフィニティーカラムクロマトグフィーを行った。銅キレートアフィニティーカラムで溶出した活性画分は、[^<35>S]GTPγS結合能を有する分子量約24KDa、及び、10KDaのタンパク質を含んでいた。従って、この反応系に関与するこのGタンパク質は、低分子量Gタンパク質であると推察された。次に、他の細胞系において、PA合成系に関与するホスフォリパーゼDをRhoタンパク質(Rho)が活性化することから、RhoのADP-リボシル化酵素として知られているC3ボツリヌス酵素、または、EDINで処理したが、不活性化されなかった。そこで、この増強因子は、ARF様タンパク質と推察されるので、酵母から、PCR法によってARF遺伝子を単離し、大腸菌にトランスフォームした。現在、毒素によるPA合成亢進に対するARFの効果を検討中である。
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