C型インフルエンザウイルスのHE糖蛋白質に対する37個の単クローン抗体のうちlinear epitopeを認識する抗体の一つであるS16がHE分子上の403位のアミノ酸を含むepitopeを認識する、という作業仮説に基づき研究を進めたところ、次の結論が得られた。 1.403位にGlu(グルタミン酸)をもつC/Ann Arbor/1/50株のHE遺伝子のcDNAをSV40ベクターに組み込み、CV-1細胞で発現させた。この蛋白は確かにS16と反応することを、蛍光抗体法と免疫沈降法により確認した。 2.上記のベクターに、部位特異的変異導入法により403位にGlu→Lys(リジン)の変異を導入した。この変異蛋白をCV-1細胞で発現させたところ、S16との反応性が消失していた。 今後は、(1)403位にLysをもつ分離株(C/愛知/1/81株)のHE遺伝子のcDNAをSV40ベクターに組み込み、CV-1細胞で発現させ、この蛋白がS16と反応しないこと、ならびに(2)(1)のベクターに上記とは逆の変異(Lys→Glu)を導入し、この変異蛋白がS16との反応性を回復していることを確認する予定である。
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