平成3年の時点で茨城県内の一次、二次救急病院および総合病院に入院していた全脳血管障害患者861名を1年後に追跡した結果は、162名が死亡、362名が自宅退院、117名が入院、36名が施設入所していた。この集団を対象に、個別訪問の協力をあおぎ施設療養(入院および施設入所)者155人および在宅患者215名の訪問調査を実施した。調査内容は、本人の日常生活動作能力、痴呆程度の客観的介護負担(介護に要する時間等)、主観的介護負担感、介護への意識、利用している社会資源、今後のニーズ、介護への意識等である。この結果、各種の有用な結果が得られたが、その中で今後のシステムの検討の上で最も興味深く有用と考えられたのは、施設療養者91名の家族のうちの60%が、在宅支援システムが整えば在宅で患者を看る意志があると答えていたことである。本年度は、さらに3年後の調査を行なう予定であったが、各種の折衝努力にもかかわらず、プライバシーの観点から、県の協力を得ることが難しく、実施できなかった。我が国における追跡調査の実施の困難さを実感した。そこで、今年度は、1年後の追跡調査の結果をさらに分析し、どのようなサービスが必要とされているかをあきらかにした。具体的には、第1位が、いつまでも往診してくれる医師の存在であり、第2にいつでも受け入れてくれる入院体制(後方ベッドの確保)が挙げられた。 この結果によれば、医療との連携を中心とするシステム整備により60%の患者を在宅復帰させ得る可能性を示しており、今後、この結果をもとに、さらに追跡調査の可能性を探っていくと同時に、他の地域での新たな追跡調査をも実施していきたいと考えている。
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