本年度は転写機構で重要な役割を果たすRNAポリメラーゼII(RNAP II)に対する自己抗体の免疫学的性状を分子生物学的手法で追求した。【方法】(1)免疫沈降法でRNAP IIサブユニットと反応した抗RNAP II抗体陽性の強皮症15例を対象、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎(PM)、健常人の446例を対照とした。(2)免疫沈降反応により、RNAP II largeサブユニットのリン酸化型、脱リン酸化型との反応性を調べた。さらに、18アミノ酸からなるCTD合成ペプチド{NH_2(YSPTSPS)_2-YSPT-amide}を添加し、かかる反応に対する抑制活性を検討した。(3)cDNA^<CTD>をpGEX-2Tに組み換え、融合蛋白とし発現、同抗体との反応性を免疫ブロット法で調べ、精製220kDa蛋白との反応性と比較した。(4)同抗体によるin vitro translationで発現したヒトRNAP II 23、33kDaサブユニット蛋白の反応性を検討した。【結果】(1)抗RNAP II抗体陽性15例は全例リン酸化型、脱リン酸化型の両サブユニットを確認した。合成ペプチドによる免疫沈降反応抑制試験では、11例中8例(5例で完全、3例で部分的)に抑制が認められた。かかる例では、両サブユニットの反応が抑制された。(2)免疫ブロット法で精製220kDaサブユニットを認識した11例全例がCTD融合蛋白と反応した。一方、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎患者、健常人からの対照血清は同蛋白と反応しなかった。(3)15例中13例が23kDaサブユニットを免疫沈降したが、全例33kDaサブユニットとは反応しなかった。 【結語】抗RNAP II抗体はRNAP II-220kDaサブユニットのリン酸化型、脱リン酸化型の両サブユニットCTDを認識した。また、23kDaサブユニットにも主要な抗体結合部位の存在が示唆された。
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