研究概要 |
アクチビン受容体にはI型、II型が存在する。受容体I,IB型cDNA、受容体II,IIB型cDNAを利用して発現ベクターを作製した。ヒト肝癌細胞株に発現ベクターを形質導入し、耐性薬剤を利用して単一のクローンを得た。ノザンブロッティングにより受容体のmRNAが発現していることを確認し、[^<125>I]アクチビンAを用いた結合実験により作られた蛋白が受容体として正しく機能していることを確認した。[^<125>I]アクチビンAが結合するためにはII型、またはI型+II型の発現が必要であり、I型のみでは結合しなかった。これらの細胞株を用いてアクチビンAによる増殖抑制効果を検討した。増殖抑制効果は細胞数、DNA量の経時的変化、[^3H]thymidineの取り込みを指標として測定した。しかしヒト肝癌細胞株PCL/PRF/5, Huh7, HLEの3株ともアクチビン受容体を発現させた後もアクチビンAによる増殖抑制効果は全くみられなかった。以上からアクチビンA不応性の原因は受容体以降のステップにあることが示された。アクチビンの細胞内の情報伝達機構はほとんどわかっていないが、TGF-βはサイクリン依存性キナーゼの活性を抑え、RB蛋白のリン酸化を抑制して増殖抑制作用を示すことがわかってきた。そこで形質導入したPCL/PRF/5細胞のRB蛋白のリン酸化の程度をアクチビンAの有無で検討したところ、アクチビンAによるRB蛋白のリン酸化の抑制は見られなかった。今回検討したヒト肝癌細胞株のアクチビンA不応性の原因は、受容体とRB蛋白の間のシグナルの異常にあると考えられた。
|