IL‐10は、単球/マクロファージもしくはTh2 CD4T細胞の産生する免疫抑制性サイトカインであるが、IL‐10のノックアウトマウスでは高率に潰瘍性大腸炎類似の腸管粘膜病変が生じることが知られている。一方、我々は腸管上皮細胞が腸管局所において補体成分を産生分泌して腸管粘膜局所の生体防御機構において重要な役割を果たしていることを明かにし報告してきた。この腸管上皮細胞からの補体成分の産生は、各種の炎症性サイトカインたとえばIL‐1、IL‐6、TNF、IFNγにより巧妙に誘導される。本年度の研究では、IL‐10の腸管局所における補体成分の産生と補体制御蛋白DAFの発現に対する効果を検討することにより、IL‐10の欠損により生じる粘膜障害機序の一端を明らかにすることを目的とした。IL‐10単独では腸管上皮細胞からの補体成分およびDAFの発現に対しては、何等効果を認めなかった。一方、IFNγによりヒト胎児腸管上皮細胞から誘導される補体成分C4、factorBの産生を、IL‐10は濃度依存性にmRNAの発現および蛋白レベルで抑制した。また、ヒト胎児腸管上皮細胞の補体活性化制御蛋白DAFの発現は、補体成分の発現と逆に、IL‐10の存在により増強した。以上よりIL‐10は、腸管上皮細胞からの補体成分の産生に対しては抑制的に、DAFの発現に対しては誘導的に作用することにより、補体の活性化に伴う細胞障害を防御しているものと考えられた。今後、これらの結果をin vivoで確認していく予定である。
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