研究概要 |
GALTにおけるリンパ球homingを制御する因子のひとつとして、脳腸ペプチドが指摘されている。我々は、既にVIP投与がリンパ管でのリンパ球輸送やPeyer板へのhomingの初期過程を抑制することを指摘しているが、今回リンパ球側因子への影響からみたVIPの役割を検討した。 Wistar系雄性ラット約250gを用いた。腸リンパ管から採取したリンパ球をPBSにて洗浄、VIP10^<-8>M添加群と無添加群に分けRPMI1640液中で37°C、1時間incubationした。その後、FITC(fluorescein isothiocyanate)を標識し、recipient ratの頚静脈から注入、その2時間後にPeyer板、腸間膜リンパ節を取り出し凍結切片を作製した。第一抗体としてrabbit anti-FITCおよびmouse anti-rat lymphocyte(CD3、CD4、CD8)を同時に反応させ、第二抗体にはFITC標識goatanti-rabbit IgG、phycoerythrin標識goat anti-mouse IgGを用いて蛍光抗体二重染色を施した。FITC標識リンパ球のhomingをサブセットごとに検討したところ、VIPとのincubationが、標識リンパ球注入2時間後のT cellのPeyer板へのhomingを有意に抑制することが明らかになった(第81回日本消化器学会総会、平成7年5月)。さらに、腸管リンパ液より nylon colummを通してT cellを分離し、VIPとともにincubationした後、flow cytometryにてLFA-la、LFA-1β、VLA-4、LECAMの発現を検討したが、VIPはT cell上のLFA-1、VLA-4、LECAMの発現には影響を与えなかった(8th International Congress of Mucosal Immunology、San Diego、CA、USA 平成7年7月、Clin Immunol Immunopathol 76;S77,1995)。 以上の成績はVIPによるPeyer板へのリンパ球homing抑制の機序のひとつが、リンパ球への直接作用によることを示すが、LFA-1、VLA-4、LECAMを介する内皮への接着過程でなく、他の作用機序によることが推測され、今後さらに検討すべき課題と考えられた。
|