研究目的は気管支喘息の病態を解明するうえで、気管支平滑筋をめぐる収縮制御機構および気道の修復・増殖過程の分子メカニズムを細胞骨格蛋白質から明らかにすることである。ここでは平滑筋の収縮制御蛋白質であるカルポニンの発現を気管支平滑筋において検討することであった。 1.まずヒトカルポニンのDNAの同定は私達が精製した抗カルポニン抗体およびラットカルポニンcDNAを用いて塩基性カルポニン、酸性カルポニンのDNAが同定された。この結果に関しては当研究室の間口らが既に本年度に報告した。 2.気管支平滑筋の培養に関しては、現在進行中である。また既にいくつかのサイトカインを購入済であり、現在それらのサイトカインがカルポニンをはじめとする細胞骨格蛋白質の発現に与える影響について検討を加えているところである。 3.さらに健常者と喘息患者のカルポニン遺伝子のRFLPに関しては、現在気管支患者、および健常者の白血球からDNAを精製、保存しているところであり、近いうちに検討ができるものと思われる。 さらに気管支喘息以外の疾患、間質性肺炎にも注目している。間質性肺炎の病態形成において、線維芽細胞の果たす役割は大きい。間質性肺炎の組織中に平滑筋の性格を有する線維芽細胞が出現することが知られており、その中でカルポニンの発現の動向は興味深いものと思われる。今回、気管支平滑筋と同様にヒト肺線維芽細胞におけるカルポニンの発現も免疫染色とノーザンブロット法を用いて検討しており、また気管支平滑筋と同様にサイトカインによるカルポニンの発現、形質転換の動向にも検討を加えている。
|