生体肺での発現調節機構及び相互作用機構を明らかにする目的で、(1)気管支喘息の治療に用いられている吸入ステロイドが肺β_2アドレナリン受容体(β_2-AR)に及ぼす効果、ならびに、(2)リポポリサッカライド(LPS)刺激後に惹起される炎症が肺β_2-ARに及ぼす効果を、Receptor binding assay、Northrn blotting法、および、Electrophoretic mobility shift assayを用いて、実験動物を対象として検討した。 (1)モルモットにデキサメサゾン0.2mg/mlを超音波ネブライザーで7日間吸入させると、肺β_2-ARは対照群に比し30%増加した(p<0.05)。しかし、脾臓β-ARに変化は認められなかった。また、肺β_2-ARmRNAの発現量にも変化は認められなかった。この結果は、気管支喘息治療における吸入ステロイドの有用性を支持するものと考えられた。 (2)ラットにLPS5mg/kgを腹腔注して、肺に炎症状態を惹起させた。このモデルでは、多形核白血球浸潤が肺に認められ、グルココルチコイド受容体(GR)mRNAの低下、ならびに、転写因子NF-κBの増加とGRE様DNA結合活性の低下が見られた。こうした、炎症がみられる時には、β_2-ARの発現が低下していることが予想されたが、β_2-AR、β_2-AR mRNA、ならびに、GREB様DNA結合活性には変化が認められなかった。 当初計画していた、健常者と気管支喘息患者の末梢血液中の単核白血球(リンパ球)を対象とした実験は今後行う予定である。
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