研究概要 |
細胞骨格の構成蛋白質である微小管に作用するタキサン化合物は固形癌に対する化学療法の中心的抗癌剤の一つとなりつつある。タキサン化合物の一つであるpaclitaxelの微小管関連蛋白質(microtubule associated proteins,MAPs)に対する作用を、細胞周期を同調したヒト培養肺癌細胞株を用いて検討し、以下の結果を得た。 1.MAPsの一つであるMAP2蛋白質とα-、β-チュブリン蛋白質の親和性がpaclitaxel接触により増強した。 2.MAP2蛋白質をリン酸化するMAPキナーゼ活性をmyelin basic proteinを基質として測定し、paclitaxelを添加した細胞のMAPキナーゼ活性が抑制されることを明らかにした。本抑制作用は、細胞周期特異的(G2/M期)で濃度依存的であった。また、paclitaxel耐性細胞においては、その抑制は認められなかった。 3.G2/M期におけるcdc2キナーゼの活性化はpaclitaxel添加細胞において抑制された。 4.paclitaxelは粗精製微小管蛋白質中のMAPキナーゼ活性に対して、直接的な抑制作用は示さなかった。 これらの成績はpaclitaxelが微小管関連蛋白質および、その細胞内情報伝達機構に作用する可能性を示唆する。 本研究で明らかにしたpaclitaxelの作用は当該薬物のMAP2キナーゼ阻害剤との併用による作用増強や他の抗癌剤との併用による抗癌効果の増強の可能性を検討する上で意義があると考えられた。
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