研究概要 |
胎生16日のラット線条体よりO-2A前駆細胞を単離培養し,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加しO-2A前駆細胞を大量培養した.GTC溶液にてRnaseを阻害し,フェノール抽出によりmRNAを得た.対照としてドパミン神経に対する強力な栄養効果を持つGDNF(glial cell-line derived neurotrophic factor)を産生することが知られているラットB49グリオーマ細胞より同様の方法でmRNAを抽出した.mRNAをDNAse処理後,GDNF sense,anti-senseプライマーを用いてRT-PCRにてGDNF-DNAとして増幅した.B49は0.1μgのRNAより,GDNFが検出されたが,O-2Aでは1.0μgRNAでもGDNFは検出されなかった.即ち,O-2A前駆細胞はGDNF以外の強力なドパミン神経に対する栄養因子を産生しているものと考えられた.また,得られたmRNAのdifferential displayを行った.培養O-2A前駆細胞に血小板由来増殖因子(PDGF)を作用させ,oligodendrocyteに分化させた.PDGFにはPDGF-A/A,PDGF-B/Bのサブクラスが存在し,いずれも10ng/mlの濃度の添加にてoligodendorcyteへの分化を誘導したが,PDGF-A/A及びPDGF-B/Bの等量(各5.0ng/ml)添加が最も効率良くoligodendrocyteに分化させうることを明らにした.また,O-2A前駆細胞培養上清の添加が,ドパミン神経細胞の生存を増加させることは既に報告しているが,血清奪取後のドパミン神経細胞におこるアポトーシスを抑制することを見出した.O-2A前駆細胞のドパミン神経細胞の生存を増加させる作用と,アポトーシス抑制作用が同一の分子,機構によるかは引き続き検討中である.
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