研究概要 |
心不全治療薬であるvesnarinoneとpimobendanによる心筋の活動電位持続時間(APD)延長作用とK^+チャネルブロックの特徴をウサギ心室筋の多細胞組織標本及び単離心室筋細胞を用いて検討し、K^+チャネルブロックを主作用とするクラスIII抗不整脈薬(sematilide,E-4031,MS-551)の効果と比較した。 1)多細胞組織標本 Vesnarinone(3-30μM)はウサギ心室筋の静止電位や活動電位立ち上がり速度に影響を与えることなくAPDを濃度依存性に延長させ、収縮張力(DT)も軽度増大させた。Pimobendan(10-100μM)はDTを濃度依存性に増大させたが、APDに対しては一定の作用を示さなかった。VesnarinoneによるAPD延長は刺激頻度0.2〜0.5Hzで最も著しく、それより高頻度域(1〜3Hz )と低頻度域(≦0.1Hz )では減弱した。Vesnarinone作用下ではAPD延長効果が刺激休止により減弱し、刺激再開により一拍毎に増強する現象(APD延長作用の使用依存性)が観察された。これらの特徴はMS-551(1-10μM)に類似していた。Sematilide(10-30μM)とE-4031(0.1-0.3μM)によるAPD延長は刺激頻度が低いほど著しくなり、典型的な逆頻度依存性を示した。 2)単離細胞実験 ウサギの単離心室筋細胞の遅延整流K^+電流(I_K)をパッチ電極によるwhole-cell clamp法により測定し、薬物の作用を観察した。Vesnarinone(3-30μM)はI_Kを濃度依存性に抑制した(IC_<50>:5.2μM)。VesnarinoneによるI_K抑制は脱分極パルスを加えると時間依存性に増強し、過分極パルスを加えると時間依存性に減弱した。MS-551(1μM)もvesnarinoneに類似した膜電位、時間依存性I_K抑制作用を示した。SematilideとE-4031によるI_K抑制は膜電位・時間依存性を示さなかった。Vesnarinoneが開放状態のI_KチャネルをブロックすることによりAPDを延長させることが示唆された。
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