研究概要 |
[目的] 抗腫瘍薬であるドキソルビシンの副作用である心筋細胞毒性の機序とその予防について明らかにするために、ドキソルビシンの心筋細胞内カルシウム動態に及ぼす影響とこれに対するACE阻害薬の効果について実験を行なった。[方法]WKYラット新生児より酵素法を用いて単離した培養心筋細胞にドキソルビシン0.1μM,1μM,10μMを投与し、24時間後fura-2/AMを用い細胞内カルシウム濃度を測定した。β受容体刺激薬であるイソプロテレノールにより刺激し、その反応性についても測定した。また培養心筋細胞にACE阻害薬であるM-1を前投与しておき、ドキソルビシン10μMを投与した時の細胞内カルシウム濃度を測定した。β受容体刺激薬であるイソプロテレノールにより刺激し、その反応牲についても測定した。[結果]ドキソルビシンは濃度依存性に心筋細胞内カルシウムトランジエントのpeak ratio,amplitudeを低下させ、またタイムコースを延長させた。イソプロテレノールに対する反応性もドキソルビシンの濃度依存性に低下した。M-1の前投与により心筋細胞内カルシウムトランジエントのpeak ratio,amplitudeの低下とタイムコースの延長は改善された。イソプロテレノールに対する反応性の低下も改善した。[結論]ドキソルビシンは細胞内カルシウム濃度を低下させるだけでなくβ受容体刺激薬に対する反応性も低下させた。ACE阻害薬は、ドキソルビシンの心筋細胞毒性を予防する可能牲が示唆された。
|