イヌ交叉潅流心標本の左室内に水を満たしたバルーンを装着し、自家製容積サーボポンプに接続した。このサーボポンプにより異なる左室容積での等容性収縮や異なる左室駆出率での駆出性収縮を起こした。こうして得られた左室圧下降脚(P(t))に対し、我々の考案したロジスティックモデルと従来から用いられている指数関数モデルをフィットさせ、その正確さを比較した。さらに両モデルから得られた、左室弛緩機能の指標であるロジスティック時定数(T_L)と指数関数の時定数(T_E)を様々な条件下で比較した。 ロジスティックモデルは負荷条件に関わらず、P(t)、dP/dtおよびdP/dt-P(t)phase-planeの各曲線を指数関数モデルより遥かに正確にフィットした。ロジスティックモデルより算出したT_Lは容量負荷は左室弛緩を遅らせ、心拍数と駆出率の増加は左室弛緩を促進させることを鋭敏に示した。さらに、P(t)のcut-off pointを進めると顕著に増大するというT_Eの最大の欠点に対し、TLはP(t)のcut-off pointに関わらず非常に安定であった。 従って我々の考案したロジスティックモデルは、指数関数より非常に優れたP(t)のモデルであることが明確に示された。このロジスティックモデルより算出したT_Lは、指数関数モデルより算出したT_Eより妥当な左室弛緩の指標と考えられる。
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