研究概要 |
我々はα1受容体の心肥大に与える影響を調べるために高血圧自然発症ラット(SHR)を用いた研究を昨年度より開始し本年度に渡り研究を継続した。対照としてはWistar-Kyotoラット(WKY)を用いた。圧負荷のかかる左室と圧負荷のかからない右室を分離して取り出して,それぞれの細胞膜を抽出した。細胞膜上のα1受容体を薬理学的結合実験により測定した。さらにα1受容体のサブタイプを区別するためにクロルエチルクロニジンを用い,不活化されないものをα1A,不活化されるものをα1Bとした。結果は5週齢ですでにSHRの右室重量と左室重量はWKYのそれに比較して増加していたが,20週齢ではSHRの左室だけが体重に対する心重量比の増加が認められた。α1受容体数(fmol/mg protein)は5週齢ではSHRの右室左室共に有意に増加していたが,20週齢ではSHRの右室だけが増加していた。α1受容体サブタイプでについては5週齢でα1AがSHRの右室で増加していた。受容体の解離係数はいずれも変化はなかった。SHRの心肥大においてはα1受容体変化は初期に現れ,圧負荷が強い左室はむしろ週齢が進と変化がなくなることから,心肥大の初期にα1受容体の関わりが大きく週齢が進むと他の因子の関与によりα1受容体による変化がはっきりしない可能性があった。また同様に心肥大の初期はα1Aの割合が大きくなることが認められたことからα1受容体の関与が強いものと考えられた。これらの結果は1995年Biol.PHarm.Bull.へ発表した。またさらに心肥大に関与するとされてる心筋のαミオシン重鎖(MHC)からβMHCへ形質転換や心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の変化を見るためノーザンブロット法によりそれぞれのmRNAの測定を行っている。
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