(目的) 新生仔ラット大脳半球より初代培養したオリゴデンドロサイトを用いて以下の点を明らかにしてきた。(1)培養オリゴデンドロサイトはグルタミン酸を細胞内に取り込む輸送系を有している。(2)グルタミン酸を取り込むと同時に、グルタチオン産生に不可欠なシスタインを放出するため、結果的にグルタチオン欠乏の状態となる。(3)最終的に、グルタミン酸はオリゴデンドロサイトに酸化障害をもたらす。 (方法) 今回われわれは、さらにその機序を明らかにするために、(1)細胞内の活性酸素種の組織染色による同定、(2)各種の抗酸化物質をグルタミン酸と共に負荷し、細胞障害性に対する影響を観察した。 (結果1) NBTによる染色ではsuperoxideの細胞内の蓄積は認められなかった。これに対し2'7'-dichlorofluoresceine diacetateを用いた方法では、グルタミン酸を負荷された細胞内に過酸化水素が蓄積する事が示された。(結果2) superoxideの分解酵素であるsuperoxide dismutase並びに過酸化水素の分解酵素であるCatalaseは、単独あるいは組み合わせて用いても、グルタミン酸による細胞障害は認められた。(結果3) Hydroxyl radicalのScavengerであるMannitol、Thiourea、Benzoateはグルタミン酸による細胞障害を抑制した。(結果4) 鉄のキレートであるDesferalおよびdiethylenetriaminepentaacetic acidはやはりグルタミン酸による細胞障害を抑制した。 (結論および考察) グルタミン酸によって細胞内に過酸化水素が蓄積されるが、実際の細胞障害はむしろHydroxyl radicalによるものであった。このHydroxyl radicalは過酸化水素よりイオン鉄の存在下にてFenton反応を介して産生されるもので、イオン鉄のキレート剤によって細胞障害の抑制が認められた。
|