研究概要 |
新潟県三市中蒲地区の肥満小児290名(男児96名,女児194名,年齢10.3±2.1歳,肥満度(標準体重比)+52.6±14.1%)を対象に,空腹時に採血を実施し,血中インスリン(IRI),血清脂質およびアポリポ蛋白を測定した.また,同時にbiological impedance法(BIA)により体脂肪率を測定し,腹部エコーにより脂肪肝を無し,軽度,中等度,高度の4群に分類し,以下の結果を得た. 血中IRIは肥満度(p<0.001),体脂肪率(p<0.001),HDL-C(p<0.05),LDL-C(p<0.05),中性脂肪(TG)(p<0.001),アポA-1(p<0.01),アポB/A-1比(p<0.05)と有意の正の相関を示したが,総コレステロール(T.Chol),アポB,アポEとは有意の相関はなかった.しかし,アポEを従属変数(Y),肥満度,体脂肪率,血中IRI,HDL-C,LDL-C,アポA-1,アポBを独立変数(X_<1-7>)として多変量解析を行なったところ,血中IRI(p<0.05),アポA-1(p<0.01)が高いほどアポEは高くなる傾向を示した.また,アポEは脂肪肝無し群,軽度群,中等度群,高度群ではそれぞれ5.5±1.3,6.0±1.8,6.2±1.4,6.8±1.6mg/dlであり,脂肪肝の程度はアポE濃度に左右されていた. 今回の検討により,小児においても肥満度,体脂肪率が多いほどインスリン抵抗性が高くなり,TGを中心とした脂質代謝に異常を来たし,これに伴いアポEにも変動が生じ,さらに脂肪肝を来たす可能性が示唆された. 今後は,単球アポリポ蛋白分泌能が血中アポ蛋白の変動に影響を及ぼすのか検討したい.
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