原則として臍帯血は胎盤娩出後に採取し、最後は生理食塩液にて灌流した。その後、6%HESをほぼ等量混合して、静置して有核細胞(NCC)を分離した。成熟児では50〜110mlの臍帯血が得られた。また低出生体重児の場合の臍帯血の採取量は成熟児に比し、ほぼ出生児体重に比例したものであった。メチルセルロースによるコロニーアッセイでは単位細胞あたりのCFU-GM(Colony Forming Unit-Granurocyte Macrophage)はむしろ低出生体重児のほうが多かった。(成熟児では30〜170/2×10^5NCCに対し、低出生体重児では50〜230/2×10^5NCC)安全性の問題では、今回採取した臍帯血のなかで細菌培養検査が施行できた21例ではすべて陰性であった。(なお採取法は一部胎盤娩出前に臍帯静脈に直接穿刺することによった。)さらに男児からの臍帯血4例の性染色体FISH法ではほぼ100%46XYの男性核型を示し、母体血の混入は否定された。また新生児に対して、凍外防止液のジメチルスルフォキシド(DMSO)は有害であると思われるため、解凍したNCCは洗浄後に患児に注入する必要があるため、今回-153℃のディープフリーザ-に保存後、急速解凍してメディウム(RPMI1640)で1回洗浄した後のCFU-GMの回収率を検討したところ、解凍前に比べて18〜31%であった。 以上より低出生体重児や重症感染症(敗血症など)で骨髄抑制をきたしているようなハイリスク新生児に対しては自己血液幹細胞(臍帯血)移植は可能であると思われた。残念ながら今回は臨床応用までには至らなかったが、今後は適応症例に対しては積極的に取り組んでいくとともに、より効率の良い採取法と回収率の良い保存法を確立していきたい。
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