この研究の目的は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)の病因を細胞性免疫より解析するため、リンパ球の標的抗原としてグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)を用い、IDDM患者の末梢血中に存在するGAD特異Tリンパ球の存在とIDDMの発症の関わり、さらにGAD特異Tリンパ球の機能とGAD分子、MHC分子の三者の相互関係について研究することによりGADの自己免疫的な発症機序のなかでその標的抗原としての意義について検討することである。以下にこれまでの成果を報告する。 1)発症早期のIDDM患者の末梢血リンパ球はGADを用いた刺激試験により健常者のリンパ球の反応より有意に強い反応性を示した。このことはIDDM患者の末梢血中にGAD特異Tリンパ球の存在することを示唆するものである。この反応は患者血清中のGAD抗体価との相関を認めなかった。これまでの自己抗体のみをマーカーとすることの限界を示すものと考えられる。 2)この反応の際に培養上清中にはγ-インターフェロンが分泌され、インターロイキン4は分泌しないことがわかった。このことはGAD特異Tリンパ球はType 1 helper T cellでありGADに対する細胞性免疫の亢進を示すものであり、GADの標的抗原としての重要性を示唆するものである。 3)末梢血リンパ球はGADを用いた刺激試験において、これまでに欧米で報告のあった三種類のGADペプチドに対する反応を検討したが有意な反応は認めなかった。これは、欧米人と日本人のHLAの違いが原因である可能性があり今後異なる部位のペプチドを用いて検討を重ねる予定である。 4)現在EBウイルス芽細胞を用い、数回の継代培養を重ねたGAD特異Tリンパ球LINEの作成に成功した。今後、限界希釈法でクローニングしGAD特異的Tリンパ球クローンを作成する予定である。 5)当科糖尿病外来通院中のIDDM患者約200人のHLAの遺伝子解析が現在同時進行中である。これまでに、糖尿病の疾患感受性とHLAの関係、臨床像、自己抗体とHLAの関係などについて報告してきた。 この今後HLAの遺伝子解析の結果とGAD特異的Tリンパ球の機能について検討する。
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