研究概要 |
糸球体腎炎の進展過程には、糸球体固有細胞の持続的な増殖が観察されるが、この研究ではbcl-2を介したアポトーシスの抑制が糸球体腎炎疾患の進展に関与しているか否かを検討した。 〈対象と方法〉 腎生検にて得られた各種腎疾患組織87例を用いて、bcl-2の発現を免疫組織学的に検討した。bcl-2mRNAはdigcxigenin標識のbcl-2 CDNAプローブを用いたin situ hybridization(ISH)によった。in situニックエンドラベリング(INST)はterminal deoxy transferaseを用いてGavrielらの方法に従って行った。また、アポトーシスを誘導するFas抗原についても検討した。 〈成績〉 各種疾患別に、糸球体クロスセクションあたりのbcl-2陽性細胞の発現頻度をみると、特にループス腎炎や巣状糸球体硬化症、IgA腎炎で比較的高頻度であった。糸球体クロスセクション当たりのFas抗原陽性細胞はINST陽性細胞の頻度と正相関していた。一方微小変化群ネフローゼや正常腎組織では、bcl-2の発現頻度は低値であった。Fas抗原やbcl-2発現細胞は主にメサンギウム細胞、ときに浸潤白血球であった。メサンギウム増殖性腎炎(IgA腎炎,non-IgA腎炎,紫斑病性腎炎例)での、糸球体内のbcl-2の発現をメサンギウム細胞の増殖の程度、および増殖核抗原(PCNA)陽性細胞の頻度、蛋白尿の程度と比較したところ、bcl-2はこれらのいずれとも良い相関性を示した(P<0.01)。このことから、bcl-2の過剰な発現が糸球体細胞の持続的な増殖に関与している可能性があるものと推察される。
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