【目的】 長波長紫外線(UVA)は、乾癬をはじめとする皮膚疾患の治療、すなわち光線療法に広く用いられている。UVAは表皮角化細胞のturn overを抑制し、さらに炎症性サイトカインの産生を抑制すると言われているが、その20-30%が真皮まで到達するので、真皮浅層の血流や白血球、特に好中球に直接作用している可能性も考えられる。 今回、微小血管モデルを用いた血液レオロジー的手法(silicon microchannel法)により、好中球機能を主として反映する血流に及ぼすUVAの影響について検討することを目的とした。 【結果】 UVAが好中球に及ぼす影響について、微小血管モデルを用いた血液レオロジー的手法(silicon microchannel法)により検討した。 (1)好中球-赤血球浮遊液のチャンネル通過性は、UVAの60-180mJ/cm^2の照射量で改善し、1200mJ/cm^2で低下した。 (2)顕微鏡下に通過状態を観察したところ、チャンネル通過性は好中球の粘着性に強く関与していた。 (3)赤血球浮遊液のチャンネル通過性は、60mJ/cm^2より照射量が増えるにつれて徐々に低下した。 (4)好中球-赤血球浮遊液の通過時間から赤血球浮遊液の通過時間を差し引いて、UVAが好中球に及ぼす影響をみたところ、UVA60-600mJ/cm^2の広い照射範囲、特に180mJ/cm^2でチャンネル通過性は著明に改善し、1200mJ/cm^2で低下した。 【結論】 180mJ/cm^2前後のUVA照射は、微小血管内の血流を改善させるが、それは主として好中球の粘着性の低下によることが明かとなった。この照射量は臨床的に使われるUVA照射の18J/cm^2にほぼ相当することから、乾癬などの紫外線療法の作用機序のひとつとして、UVAが好中球の粘着性を低下させ、その血管外への遊走を抑制するという可能性が示唆された。
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