研究概要 |
当初の研究計画にもとずき、まずヒト由来悪性黒色腫(以下MMと略す)9株のサイトカインのうちGM-CSF,IL-1,IL-6の産生能を調べた。その結果、これらのサイトカイン産生を認めないものが3株、GM-CSFのみ産生するもの2株、IL-1 を産生するもの1株、IL-6を産生するもの2株、IL-1,IL-6ともに産生するもの1株であった。 GM-CSFとIL-1または6をともに産生する細胞株はなかった。GM-CSFを産生する2株の細胞のうち1株ではCD-44の発現が細胞膜表面に認められたが、他の1株にはCD-44の発現は認められなかった。またGM-CSFを産生しない細胞株でもCD-44の発現は認められなかった。GM-CSFを産生する2株について、IFN-βがGM-CSF産生に及ぼす影響を調べるため、細胞培養上清中に、IFN-βをそれぞれ、10^2IU/ml,10^3IU/ml,10^4IU/ml加え、3日間培養し、上清中のGM-CSFの濃度を調べたところ、濃度に依存して、GM-CSFの産生が抑制されていた。培養細胞自体の分裂、生存は肉眼的にはコントロール群と差はなく、従ってIFN-βによる直接的な細胞毒性ではなく、GM-CSFの産生のみが選択的に抑制されていると考えられた。さらにGM-CSF産生がmRNAレベルでどうなっているかを調べるため、同様の実験系(IFN-βを加えて培養する系)で、培養した細胞からmRNAを抽出し、RT-PCR法を用いて、GM-CSFのmRNA発現を調べた。mRNAレベルでは、はっきりとした濃度依存的な、抑制は確認できなかった。 またヌードマウス尾静脈から培養細胞を接種し、人工的に転移巣を作る系では、GM-CSF産生、CD-44陽性細胞では、肺に転移巣を確認できたが、GM-CSF産生細胞でも、CD-44陰性の細胞は転移巣を形成しなかった。
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