1)ラミニン分子内の新しい生物学的活性部位の検索について ラミニンの分子のアミノ酸配列に従いオーバーラップさせて合成したペプチドを用い網羅的に活性部位を検索する方法にて、ラミニンA鎖C末端G領域において細胞接着能を有するアミノ酸配列を5ヵ所見い出した。この結果については米国・国立衛生研究所 野水博士(協同研究者)から報告された。 2)合成ペプチドを用いた皮膚腫瘍治療への応用について 一分子内にYIGSR配列を持つ分枝状YIGSRペプチドは、通常のYIGSRペプチドに較べ極めて強い抗転移能を持つ。このYIGSRペプチドおよび分枝状YIGSRペプチドの抗腫瘍能の差異を明らかにし、臨床応用に進めるため、マウス黒色腫細胞B16-F10を用い造腫瘍抑制、転移抑制をマウス・インターフェロンβとの併用にてin vivoで検索した。この結果については現在投稿準備中である。 さらに1)については新しい5ヵ所のラミニン分子内活性部位はそれぞれ細胞接着能および細胞遊走能を持つため、そのアミノ酸配列の合成ペプチドを用いてマウスなどでのin vivo抗腫瘍効果の有無強弱を検索中である。また抗腫瘍効果のみならず、傷創治癒に効果のある合成ペプチドの存在も期待される。2)については、近年種々の悪性腫瘍においてアポトーシスを抑制する分子の発現が報告されてきている。悪性黒色腫や有棘細胞癌などの皮膚悪性腫瘍においてもアポトーシスを抑制する蛋白であるBcl-2が発現されており、分枝状YIGSRペプチドなどの抗腫瘍効果を持つ物質を投与した時に、Bcl-2の発現にいかなる影響を及ぼすか検索中である。
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