癌抑制遺伝子の1つNF1遺伝子は、悪性黒色腫および胃癌でその変異が認められており、我々もPCR-SSCP法を用いて悪性神経鞘腫でNF1遺伝子の変異を検出した。一方、1993年に単離されたNF2遺伝子も、その遺伝子産物(Merlin)が細胞骨格関連蛋白であるmoesin-ezrin-radixinと相同性がみられ、どのような機序により腫瘍が発生するかは明らかにされていないものの、Knudsonにより提唱された網膜芽細胞腫遺伝子のtwo-hit説があてはまり、癌抑制遺伝子の特徴を持っている。近年神経系腫瘍以外に悪性黒色腫や乳癌においてもNF2遺伝子の変異が報告され、癌抑制遺伝子として特に注目されてきている。さらにNF1蛋白は、特に表皮内で発現されることが注目されており、皮膚悪性腫瘍発生においてNF1、NF2遺伝子変異が何らかの関連を示しているものと思われる。 昨年我々は、皮膚悪性腫瘍とNF1、NF2遺伝子変異との関連を明らかにするため、悪性黒色腫患者5例のDNAを解析した。その中で1例のNF2遺伝子のエクソン10領域に変異を認めたが、sequenceでその変異を確認する予定である。さらに他のエクソンを解析するとともに、症例数を増やし、また、他の皮膚癌でも検索するため、現在、悪性黒色腫3例、有棘細胞癌2例、基底細胞癌3例について解析中である。
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